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Carl Zeiss Jena Feldstecher 6x18であることは、海外愛好家の方がネット上に公開している双眼鏡と酷似していること、再塗装のため不鮮明ながらプリズムカバーに「Carl Zeiss Jena, Feldstecher Vergr.=6.」と読めること、対物レンズ径・瞳径の測定により確認しました。
双眼鏡本体の幅は約14cm（目幅65mm）、高さは約9.5cm（視度値：0時）、重さは約405gです。

シリアルナンバーが5000番代である事と、1904年以降の機種のブロック体のCarl Zeiss Jenaマークではなく筆記体であることから製造は日露戦争前夜の1902～1903年頃と思われます。
有名な1900±1年製造の”5/10x25”東郷グラスとほぼ同時代の双眼鏡で、本モデルの製造期間も1896～1906年と東郷平八郎元帥使用モデルと同じです。
また、中心軸先の形状より、東郷グラス同様にドイツ軍用モデル（D.F.）ではなく民間用（兼輸出用？）モデルです。
当時のカタログによると、東郷グラスの半分ほどの値段で売られていたようです。

左右のピント調整（視度目盛り：-7～+11）と目幅調整は可能で、現状でも一応使用可能ですが、・全体的にスレ傷汚れが多く、古物臭がする。
・再塗装されている。目幅位置マーキング機能部分も塗料で埋まって調整。（現状のマーキング位置は65mm。目幅は約50～75mmで調整可能。）
・レンズ、プリズムにカビや汚れ、曇りなどがある。
・レンズに傷がある。ただし光が乱反射して結像できないほど深くはない。
・右目側対物枠に歪みがある。
・左目側のプリズムボックスと対物枠間に僅かに隙間がある。
・左目側プリズムに欠けがある。端なので視野にはほどんど影響しないと思われる。
・左目側プリズムの一部が固定されていないため、高頻度で光軸がズレる。
・光軸のズレを感じない場合でも左右の視野環が完全に重ならないことがよくある。
ゆっくり動かすとプリズムが動く音がします。
光軸ズレがある場合は、双眼鏡を両手で持ち前か後に倒す方向にゆっくり一回転させるとズレが少なくなります。それを何度か繰り返すと、遠くの鉄塔も二重に見えなくなるほどにズレが収まります。
もし前方向に回転させてズレが増える場合は、回転方向を逆にするとズレが収まります。

付属のケースは痛みが激しく、紐や留具部分などが欠損しているため、補修無しではケースとして機能しません。
ケースの外見も海外愛好家のFeldstecher 6x18輸出モデルの画像に酷似しており、目幅位置マーキング調整用のピン収納用金具があること（ピンはありません）よりケースもオリジナルと思われます。

口径が小さいので暗く、ノンコートなので少し白っぽく、カビ汚れも非常に目立ちますが、個人的に約120年程前に製造された双眼鏡にしてはまずまずの像だと思います。
同時代の双眼鏡断面図（https://www.zeiss.com/corporate/int/about-zeiss/history/technological-milestones/binoculars.html）と本機のプリズムボックス外寸から推測したF値は7程度で、F値3.3～4程度の現代の一般的な双眼鏡に比べ、視界が狭く（見掛視界で恐らく36°程度）、ピントが深く、周辺への像の崩れが穏やであることが特徴と思われます。
6x18のスペックにしてはなかなかシャープで、片目で見ると、晴天時に200m先の白い看板に書かれた10cmぐらいの数字が判別できる程度の分解能はあります。
遠くの鉄塔が二重に見えない
現状でもSilvamarやDeltrintemなど現代のポロプリズム双眼鏡とほぼ同じ形状に改良される以前の、Carl Zeiss Jena最初期のエッセンスを体感できると思いますが、本来の像を楽しむためにはオーバーホールが必要です。
古い双眼鏡のコレクターや、オーバーホールに自信のある方向きだと思います。


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